[特別企画] モノト・シチュエーション 阿部氏/庄子氏へのインタビュー

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Published 2017年10月15日 by 編集長 田口

モノト・シチュエーションの制作秘話 人に伝えるためにしてきたこと

田口:
脚本で迷いや悩みは出なかったんですか?

阿部:
そういうときは「舞茸しめじ」なんですよ。

庄子:
ホラね、また訳の分からない共通言語が出てきたでしょ?? (笑)

田口:
何ですか、舞茸しめじって。

阿部:
SHIROBAKOってアニメ知ってますか?

庄子:
アニメの中の「アニメ監督」がどうしようって悩んでるときに相談に乗ってくれるキャラクターの名前なんです。やってることはただのカウンセリングなの。舞茸さんは単に質問するだけなんだ。悩んでいた監督がその質問に答えていくと、そのうち自ずと思考を展開し始める。阿部さんね、それをまさにやるの。

田口:
発問指導ですね。

庄子:
伴野紘汰がどうするか分からないってときに監督から「ちょっと舞茸いいっすか?」ってLINEが来るの。

一同:
(笑)

阿部:
今作の登場人物はみんな心が繊細な子たちなんです。その細かい揺れ動きが重要なのに、二人の掛け合いをしたときに僕の思考はどっちか片方に偏ってしまっている。だから壁打ち的に伴野紘汰の視点で見たとき琴坂真奈ちゃんが何を考えてるか、あるいはその逆を確認したいんです。

庄子:
登場人物である伴野紘太はこの先のストーリーを知らないんです。でも監督はもう先を知ってるわけ。知っているからこそ「神様目線」で紘太の思考を考えちゃって、「紘汰の主観」が抜け落ちちゃったりするのね。

田口:
2周目3周目強くてニューゲームを知っている伴野紘太が出てきてしまうんですね。

庄子:
そう、監督は全部知っちゃってる。だから監督の中では琴坂真奈ちゃんすら時にすごく頭のキレる子になっちゃってる。そういう時に「真奈ちゃんはいつも通りのナチュラルなことを言うだけなんじゃないですかねぇ」って反応を返すだけで、それが物語のキーにはなるんだけど、その瞬間の監督って「ちょっと良いですか!」ってSkype放ったらかしてカタカタとキーボードで打ち込み始めるの (笑) 俺その打ち込んでる監督の横顔をディスプレイで見ながらビール飲むんだ (笑)

 

田口:
良いオツマミだ (笑)

庄子:
(笑) でもその舞茸しめじには、監督からの状況説明が最初にあるわけ。そこで2時間くらい使うの。「今このシーンで紘汰がこうやってて真奈ちゃんが居て」って。監督の頭には全てあるから、まず聴き取りから始める。俺は必至にそれをノートにメモって状況を細かく質問していく。それに15分位かな。その繰り返しで、たぶんそのノートは家に20~30冊あるかも。

田口:
そんなにですか (笑) じゃあ脚本は「舞茸しめじ」をするときに渡されていない?

庄子:
プロットは知っていますけど、基本はその場のSkypeです。脚本も行き着く先は変わらないけど、道中が日に日に変わるからね。

阿部:
作り方の基本として、まずテーマ (主題) から命題を抽出して、その命題に対する肯定派と否定派を主人公とヒロインに割り振ります。

田口:
理路整然と作り込んでいくわけですね。

阿部:
次にその命題の根本的な解決を諦めた、あるいは短絡的・短期的な決着を選んだ人物を敵役に配置します。そのコマを動かすようにいろんなシチュエーションをバラバラと書き出して、その組み合わせを13フェイズ構造に照らしながらあれこれと入れ替えて、ざっくりとしたプロットを作ります。その具体化作業の中で自分でも分かっていなかったこの物語の根幹部分を探っていき、最終的にそれを三行のログラインにまとめます。

田口:
ああ、それが文字情報になっていると。

阿部:
はい。ここがバッチリとハマったと実感が得られた段階で最初から最後までの展開が確定します。主人公の成長のきっかけもすべてここに含まれます。でも、まだそこには誰の感情も乗っていない。あくまで筋道が整理されただけです。

田口:
そうですね。

阿部:
そこから脚本化に向けてのリライト作業を行います。1回目はまず主人公に気持ちを乗せて、次にヒロインに乗せて、3回目はサブキャラクターに乗せて、さらに4回目に全体を整えるように。これによって脚本には満たないけどプロットと言うにはボリュームのある準脚本ができあがります。

田口:
1回ごとにキャラの立場になってシナリオと各キャラの感情の整合性をとっているんですね。

阿部:
はい。1回目の主人公の目線で描いたものが、ヒロインの目線が入ることで主人公の動作も変わっちゃう。構造的にどこで成長するかは変わらないです。俯瞰してみると大差ない。でも一人称で見ると揺らぎがあるんです。だからプロット段階で5回くらい書き直しをしています。

田口:
そうか。一人ずつの感情で影響が出てしまうから微妙なずれが生じますね。

阿部:
そうなんです。そのずれが生み出す問題をどう解消するのか、その必死の試行錯誤の結果がハウツー本では伝えられない物語でしか伝わらない”なにか”を生み出すんです。

田口:
“何か”ですか。それは・・・?

阿部:
別に筋道の整合性を作りたいわけではないですからね。そうやって十分に感情の乗った”なにか”が生み出せたときには、プロットの流れ自体変わっていなくとも、ラストの解釈が違って感じられたり、あるいは当初予定になかったラストのさらに先に到達できるようになります。モノトはそこまで捻りだすところまで「舞茸しめじ」していただきましたね(笑)

田口:
では、モノト・シチュエーション全20章をプレイし終えたときには、捻りだされた“なにか”が分かるようになると?

阿部:
そこはあくまで作り手側の再発見の話ですので(笑) でも、そこまで突き詰めた結果の答えというのは提示できるんじゃないかと思います。

庄子:
それでもモノト・シチュエーション世界の一部でしかないけどね。ほら、俺も「舞茸しめじ」でいろいろ聞いちゃってるから (笑)

阿部:
「伝わる」が目標ですから。本作では浸透力を考慮してだいぶ削ぎ落していますが、もちろん「伝えたい」はまだまだいっぱいあります (笑)

田口:
なるほど。「伝える」と「伝わる」の違いですね。

阿部:
そうですね。とはいえ、物事の解釈はひとりひとり微妙に違うので現実にはなかなか難しい。それを考えた際に作品で間接的に「伝える」方法もあるけど、一緒に作品を作る仲間を増やす方が実はもっと「伝わる」んじゃないかという発想の切り替えをしました。分かっていないと具現化できませんから。こっちも具現化させるために必死で説明しますし。

庄子:
他人のことそんな好きじゃないのにね。

阿部:
(笑)

庄子:
阿部貴弘に興味を持ってもらって、モノト・シチュエーションが多くの人にプレイしてもらえたらそれだけで良いんですよね。放っておいたらどこにも出てこない『森の中の仙人』みたいになっちゃうから (笑)

田口:
(笑) すごく面白いお話を聴かせていただけました (笑) ぜひ次のvol.2を楽しみにしています。今日は本当にありがとうございます。

そして最後に

インタビューを含めた雑談の中で阿部氏の考え方、庄子氏の捉え方を伺っていったが、その全貌は実に数時間に及ぶものになった。

今回はモノト・シチュエーションに絞ったものを文字化して掲載させていただく。

そこで改めて感じたのは「MONOTO-SITUATION : LUCID AND DAYDREAM」は新しいアニメーションの在り方なのだと。この度のインタビューで筆者なりにも「モノト・シチュエーションは単なるノベルゲームというカテゴリではない」のだと再認識ができた。

モノト・シチュエーションは伴野紘太の目線そのもので、彼の情緒や選択の結果を共感できるゲームになっていると筆者自身が感じるからだ。

そして何よりインタビューをしていて猛烈に感じたのは、阿部氏・庄子氏お二人の熱量の高さだった。エンジンを作り直し、ストーリーもキャラごとに精査した本作が、日本の珠となってくれればと願ってやまない。

さらに最後の最後に、この場をお借りしてお礼を申しあげたい関係者の皆さま。

とても素敵な時間と空間、そして阿部氏・庄子氏のお二人に会わせていただいたD社 T氏。

対談を盛り上げるに当たって魅力的で美味しい料理を提供してくれたK社 R氏にも改めて感謝をお伝えしたい。

そして偶然と敢えて言わせていただくが、来たる10/31に待望の「MONOTO-SITUATION : LUCID AND DAYDREAM vol.2」がリリースされる。本インタビューがまさにその追込み作業中であったにも関わらず、貴重なお時間を割いてお会いくださった阿部貴弘氏、庄子智一氏の両名に改めてお礼を申しあげ、本稿を締めくくりたい。

編集後記

この度のインタビューの録音データを何度となくリピートして、私は涙腺が崩壊してしまいました。お二人のモノトにかける想い、長年をかけて得た信頼関係が、ビリビリと肌感覚で伝わったのが思い出されたからです。

私は本稿で、モノト・シチュエーションという作品の魅力を少しでも伝えられたらという思いで編集しました。vol.1を既にプレイされた方にも、モノトって何だ?と興味をもった未プレイの方にも、お二人の熱い思いが伝播すれば幸いです。

推奨機種
  • iPhone 5 以降、iPad 第三世代以降の端末
  • iOS 8.1 以降
料金体系
  • MONOTO-SITUATION:LUCID AND DAYDREAM 本体 (第01章までプレイ可能):無料
  • [アプリ内課金] シナリオ vol.1 (第02章~第06章まで収録):360円
  • [アプリ内課金] エキストラ (お気に入り・各種ライブラリ機能):360円
  • [アプリ内課金] シナリオ vol.1+エキストラ (セット販売):600円

モノト・シチュエーションは全20章を予定しており、続編 vol.2 が2017年10月31日リリースされる。

  • [アプリ内課金] シナリオ vol.2 (第07章~第12章までを収録):360円
  • [アプリ内課金] シナリオ vol.3 (第13章~第20章までを収録):480円 (予価)
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